ADHD(注意力欠如・多動性障害)

AD/HD (注意欠如・多動性障害)

 

◆AD/HD(注意欠陥・多動性障害)とは◆

AD/HD(注意欠陥・多動性障害)とは、注意力や集中力が継続しない、落ち着きがなくじっとしていられない、後先を考えずに即座に行動してしまうといったような『不注意』、『多動性』、『衝動性』を特徴する行動障害です。

症状の表れ方は人によって様々ですが、臨床的には注意力散漫、忘れっぽいといった不注意の症状が目立つもの、じっとしていられない、とっぴな行動をするといった多動・衝動性の症状が強く表れるもの、またこれら両方の症状が混合して表れるものの、3つのタイプに分けられています。

主に学齢期児童の3-7%にその症状が認められ、どちらかというと男子における罹患率が高いのが特徴です。

 

AD/HD(注意欠陥・多動性障害)の発症原因に関しては、現在のところ明らかにはなっていません。

しかし、AD/HD(注意欠陥・多動性障害)を発症している子供の脳において、注意力、行動力、判断力などをコントロールする前頭葉や尾状核といった部分の未成熟な発達や、脳内の情報伝達を担っている、ドパミンやノルアドレナリンといった神経伝達物質の減少がみられることから、脳の器質的、そして機能的異常が発症要因であると考えられています。

また、親がAD/HD(注意欠陥・多動性障害)であると、その子供における発症率が約50%と高いことから、ある程度の遺伝的要因が関与も指摘されています。

 

AD/HD(注意欠陥・多動性障害)は落ち着きや集中力がなく、また感情のコントロールができないということから、集団生活や学習にしばしば著しい支障をきたすことになります。

加えて、集団生活や対人関係において常に問題を起こしているという失敗体験や、被叱責体験から、結果として周囲となじめずに情緒不安定になったり、自尊心や自己評価が低くなるといった心理面における弊害につながることも多々あるとされています。

ほとんどが成長と共に収まるとされていますが、一部においては成人となってもその症状が治まらず、社会的評価が低くなったり、衝動をコントロールできずに薬物中毒やアルコール中毒に陥るなど本人にも社会にも大きな問題を引き起こしてしまうとされています。

 

◆AD/HD(注意欠陥・多動性障害)の症状◆


*不注意

・集中力が続かない
・気が散りやすい
・忘れっぽい
・会話中、ぼーっとしていて話をきいていないように思える

*多動性
・落ち着きがなく、じっとしていられない
・着席していなければならない状態で、席から離れてしまう
・体を動かすことがやめられない

*衝動性
・思いついた行動に対して、結果を考えずに即座に行動をしてしまう
・順番を待てない
・質問を最後まで聞かずに答える
・他人同士の会話や遊びに割り込む

*その他
・劣等感を抱いたり、自分に対して自身が持てない
・友達とトラブルになりやすい
・孤立
・情緒不安定、かんしゃく

 

◆AD/HD(注意欠陥・多動性障害)の治療薬◆

AD/HD(注意欠陥・多動性障害)の治療法には薬物治療と心理社会的治療(非薬物治療)の二つを組み合わせて行うのが基本となります。

薬物治療は、AD/HD(注意欠陥・多動性障害)患者の脳内で減少しているノルアドレナリンやドパミンといった神経伝達物質の濃度を上昇させ、その作用を増強させることによってAD/HD(注意欠陥・多動性障害)の不注意、多動性、衝動性といった症状を抑制する作用を発揮します。

しかし、AD/HD(注意欠陥・多動性障害)の患者においては社会性への順応性が著しく欠如しているため、薬物でその症状を抑えるだけでは充分な治療とはいえません。

そのため、AD/HD(注意欠陥・多動性障害)の治療には薬物治療に加えて、家族、教育機関、医師、ソーシャルワーカーなど連携し、社会性や対人関係における適応能力を養成するための「環境調整」や「ソーシャルスキルトレーニング」といった非薬物療法を同時に進めることが重要とされています。