非定形抗精神病薬(新規抗精神病薬)

非定形抗精神病薬(新規抗精神病薬)

非定形抗精神病薬(新規抗精神病薬)とは、主に統合失調症の治療に用いられている薬剤で、中枢神経に作用し精神機能に影響を及ぼす作用を持つ向精神薬の一種です。

中枢神経とは神経系の中心部で、多数の神経細胞(ニューロン)が密集して身体・精神の機能を統率している部位で、具体的には脳と脊髄が該当します。

 

精神機能の異常は脳内の情報管理に関与している、神経伝達物質の分泌や、その働きの異常によるものとされています。

脳内には数多くの神経伝達物質が存在していますが、統合失調症との間に特に強い関連性が認められているのがドパミンです。

そのため従来はこのドパミンの過剰な作用を抑制する定形抗精神病薬が用いられてきました。

しかし、定形抗精神病薬は統合失調症の陽性症状にこそ効果を発揮するもの、陰性症状に対する効果はほとんど見られず、また、口渇、便秘、かすみ目や、眠気、そして錐体外路症状と呼ばれる動作障害と言った副作用発現しやすいという欠点がありました。

 

これらの定形抗精神病薬の欠点を補う形で開発されたのが非定形型抗精神薬(新規抗精神薬)です。

非定形型抗精神薬(新規抗精神薬)はドパミン受容体遮断作用に加えて、セロトニン受容体の遮断作用を併せ持つもので、統合失調症の陰性症状にも効果を発揮します。

これはセロトニンの働きが抑えられることによって、セロトニンが過剰にドパミンの作用を抑制することが阻止され、脳内のドパミンとセロトニンのバランスが調整されることによるとされています。

また、定形型抗精神薬において問題視されている副作用が発現しにくいことから、患者に負担がかからないという点も利点とされています。

 

◆統合失調症とは◆

統合失調症とは、思考や行動、感情をまとめる(統合する)脳内のネットワーク機能が低下する精神的疾患で、2002年に日本精神神経学会によって改名されるまでは精神分裂病として知られていた病気です。

国や人種に関わらず約100人に1人の割合で発症するとされており、幻覚(幻聴)や妄想、思考障害、過度の興奮と言った『陽性症状』、意欲の低下、感情の起伏の減少、自閉と言った『陰性症状』、集中力、記憶力、注意力、思考力の低下が認められる『認知障害』と言った症状が認められ、これらの症状が前駆期、急性期、休息期、回復期と言った経過に伴って発現します。

その明確な発症原因は不明ですが、主に遺伝的要因や環境的要因によって、脳内で情報伝達の役割を担っている物質が過剰に働くようになり、結果として脳の機能に障害が引き起こされることによるものであるという説が現在のところ最も有力であるとされています。

統合失調症はその70-80%が思春期から40代といった比較的若い年代に発症し、例え回復したとしても人格や社会生活が損なわれることもあることから、以前は不治の病ともされてきました。

しかし、1950年代以降の向精神薬の開発とその改良、そしてリハビリテーションの発達などに伴って予後が良好なものとなったため、現代では早期の発見、及び適切な治療によって統合失調症を発症した人の約半数が社会生活に支障をきたさないまでに回復することのできる病気とされるようになっています。

 

◆統合失調症の症状◆

*陽性症状
・幻覚(幻聴)、妄想
・何かをやらされているという気持ち(作為体験)
・焦燥感、イラつき
・支離滅裂なことを言う
・極度の興奮

*陰性症状
・感情の起伏が乏しくなる
・意欲の減退
・思考の低下
・自閉

 

◆統合失調症の治療◆

現在、統合失調症の諸症状は脳内の情報管理に関与している、神経伝達物質の分泌や、その働きの異常によってもたらされると考えられています。

そのため、治療はメジャートランキライザーと呼ばれる抗精神薬を用いて異常を引き起こしている神経伝達物質の働きを正常化させる薬物治療が中心となっています。

 

脳内には数多くの神経伝達物質が存在していますが、統合失調症との間に特に強い関連性が認められているのがドパミンです。

ドパミンは行動の動機付けに関連している神経伝達物質で、個々の行動を一つの目的にまとめ上げる働きをしているとされています。

このドパミンが何らかの原因によって過剰に分泌されたり、作用したりするようになるとこの行動を一つにまとめ上げる能力に支障をきたし、結果として幻覚や妄想が現れたり、会話や行動をコントロールできなくなるといった統合失調の陽性症状が現れ、逆に、ドパミンの減少は、動機づけを希薄にし、気力や意欲を低下させ、活発さを損失させるため、行動が閉じこもりがちになる陰性症状を発症させると考えられています。

 

統合失調症の治療に用いられているメジャートランキライザー(抗精神薬)は定形型抗精神薬、非定形型抗精神薬(新規抗精神薬)に分けられています。

ドパミンは脳内の神経細胞から分泌されたあと、情報の受け手である受容体にくっつくことでその作用を発揮しますが、定形型抗精神薬はこの受容体にドパミンよりも先にくっつくことで、ドパミンと受容体が結びつくことを阻止します。

この作用によってドパミンの過剰な作用が抑えられ、幻覚や妄想といった統合失調症の陽性症状を改善するとされています。

しかしながら、この定形型抗精神薬は陰性症状の改善効果はほとんど見られません。

また、口渇、便秘、かすみ目や、眠気、そして錐体外路症状と呼ばれる動作障害と言った副作用発現しやすいという欠点もあります。

そのためこれらを補う形で開発されたのが非定形型抗精神薬(新規抗精神薬)です。

非定形型抗精神薬(新規抗精神薬)はドパミン受容体遮断作用に加えて、セロトニン受容体の遮断作用を併せ持つもので、統合失調症の陰性症状にも効果を発揮します。

これはセロトニンの働きが抑えられることによって、セロトニンが過剰にドパミンの作用を抑制することが阻止され、脳内のドパミンとセロトニンのバランスが調整されることによるとされています。

また、定形型抗精神薬において問題視されている副作用が発現しにくいことから、患者に負担がかからないという点も利点とされています。