脳腫瘍

脳腫瘍

◆脳腫瘍とは◆

脳腫瘍とは脳組織に異常細胞が増殖する病気の総称です。脳組織そのものに発生する原発性のものと体のほかの部位に発生したがんが転移した転移性のものとがあり、また腫瘍の性質や発症部位などに基づいて良性と悪性とに分類されています。

年間の発症頻度は10万人中8-10人とされており、子供から大人までの幅広い年齢層での発症が認められますが、子供においては髄芽腫や胚細胞腫が多いのに対し、成人では神経膠腫(グリオノーマ)、神経鞘腫、髄膜腫が多いといったように発症年齢のピークがそれぞれの腫瘍によって異なるという性質があります。

脳腫瘍のうち、周辺の正常組織とは別に独自の固まり(腫瘍)として比較的ゆっくりと増殖していく性質をもつものを一般的に良性脳腫瘍と呼んでいます。

頭蓋骨内の脳以外の箇所に発生する可能性が高いとされ、代表的なものに脳を包んでいる髄膜に発生する髄膜腫、ホルモンの産生に関わっている脳下垂体に発生する下垂体腺腫、そして神経を包んでいる膜である皮膜に発生する神経鞘腫などがあります。

一方の悪性脳腫瘍とは周辺組織に侵入、破壊しながら急速に増殖する性質のものを指し、神経膠種(グリオノーマ)といったような脳組織そのものに発生・増殖する傾向が認められるものです。

また体のほかの部位に発生したものが脳に転移したものや脳に発生した悪性リンパ腫といったような転移性脳腫瘍、病理組織的には良性であるものの延髄や視床下部といったような、外科的処置が行こなえない部位に発生したものも悪性とみなされています。

 

◆脳腫瘍の症状◆

脳腫瘍の症状は各腫瘍によって異なってくるため一概には言えませんが、一般的な症状としては拡大した腫瘍が正常な脳を圧迫することによる頭蓋内圧の上昇(頭蓋内圧亢進)による頭痛、吐き気、嘔吐があります。

これらの症状のうち、特に頭痛や吐き気の症状は朝に強く表れるという特徴があるとされています。

これらの症状の他にも腫瘍のできた部位の領域の脳の機能が障害されて起こるけいれん、片麻痺、感覚障害、視力低下、言語障害などといった局所症状が起こるとされています。

 

◆脳腫瘍の治療法◆

脳は頭蓋骨で覆われておりスペースが限定されているため、異常細胞の増殖によって脳が圧迫され(頭蓋内圧亢進)、生命を脅かす危険性を伴っていることから、良性・悪性に関わらず治療が必要とされています。

可能であれば手術による腫瘍の全摘出が望ましいとされていますが、手術によって正常な脳が損傷を受ける危険性が大きいため、多くの、特に悪性の脳腫瘍において全摘出は困難、或いは不可能となっています。

そのため現在では手術によって安全に取り除けるとされるだけの腫瘍を摘出し、その後放射線治療と薬物治療の併用によって症状を抑える治療法が主流となっています。

しかし、脳には血液脳関門と呼ばれる血液中の異物の脳への侵入を防ぐ機能が備わっているため、薬成分が病変部に到達しにくいという問題点があります。

そのため脳腫瘍に用いられる抗がん剤は脂溶性が高く、分子量が小さいごく一部のものに限られてしまいます。

この問題点をどう克服するかが、今後の脳腫瘍の薬物療法(化学療法)の課題とされています。