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2013-06-04

ソース(記事原文):メディカル・エキスプレス

禁煙補助薬がアルコール依存症の治療に有望

メディカル・エキスプレス(2013年6月4日)― 国立衛生研究所(National Institutes of Health : NIH)の科学者らが行った研究によると、禁煙補助薬はアルコール依存症の治療選択肢として有望だという。この研究では、禁煙補助薬として2006年に承認されたバレニクリン(商品名「チャンピックス」)をアルコール依存症の人に使用したところ、その飲酒量および飲酒欲求が有意に低下したことが分かった。研究結果は『ジャーナル・オブ・アディクション・メディシン(Journal of Addiction Medicine)』オンライン版に発表されている。

「私たちはアルコール依存症の人の治療選択肢を広げたり、改善したりする取り組みを行っていますが、これは心強い前進です」。NIHアルコール乱用・依存症研究所(National Institute on Alcohol Abuse and Alcoholism : NIAAA)の責任者代理、ケネスR.ウォーレンPh.D(Kenneth R. Warren, Ph.D.)はそう話す。「現在使用されているアルコール依存症治療薬は一部の患者には有効ですが、すべての患者に効くわけではありません。もっと幅広いアルコール依存症患者に有効な治療となる、新しい薬が求められています」。

アルコール依存症は慢性疾患であり、飲酒欲求、飲酒のコントロール喪失、禁酒後の離脱症状、耐性(今までと同じ飲酒の効果を得るためにより多くのアルコール量が必要になる)などの症状がある。

「飲酒と喫煙は併存していることが多く、その遺伝学的・神経科学的類似性を考慮すれば、アルコール問題の治療に禁煙治療が役立つ可能性は予想できることではないでしょうか」。NIAAA 治療回復研究部(Division of Treatment and Recovery Research)の副部長で、この研究論文の筆頭著者でもあるレイZ.リッテンPh.D.(Raye Z. Litten, Ph.D.)はそう指摘する。「今回の研究は、アルコール依存症の喫煙者と非喫煙者の集団においてバレニクリンの有効性および安全性を調べた初の多施設共同臨床試験です」と、同氏は続けた。

バレニクリンを禁煙補助薬として調べた初期の研究は、この薬がアルコール問題の治療にも有効な可能性を示唆している。バレニクリンはニコチン性アセチルコリン受容体を部分的に刺激して作用することから、この受容体分子はニコチン障害だけでなくアルコール障害の治療標的としても有望ではないかと考えられた。この仮説は、バレニクリンでアルコール摂取量が減ることを示した初期の動物試験によって裏付けられた。

リッテン博士と同僚のジョアンヌ・ファーティグ博士(Dr. Joanne Fertig)、ダニエル・フォーク博士(Dr. Daniel Falk)、ミーガン・ライアン(Megan Ryan)は、NIAAAの臨床研究グループ(Clinical investigations Group)とともに研究を行った。この「臨床研究グループ」は、ボストン・メディカル・センター(Boston Medical Center)、バージニア大学(University of Virginia)(シャーロッツビル)、ダートマス大学(Dartmouth University)(ニューハンプシャー州ハノーバー)、ペンシルベニア大学(University of Pennsylvania)(フィラデルフィア)、ジョンズ・ホプキンス大学医学部(Johns Hopkins University School of Medicine)(ボルチモア)の研究者からなる多施設共同チームである。研究者らはアルコール依存症の成人200名を、13週間毎日バレニクリンを服用する群か、プラセボを服用する群のいずれかに無作為に割り付けた。

被験者らは試験に先立ち、飲酒量が女性は週平均28杯以上、男性は週平均35杯以上で、ほぼ毎日、それぞれ4杯以上、5杯以上飲んでいると報告した。

プラセボと比較して、バレニクリンはアルコール摂取にかかわる各測定値を有意に下げた。例えば、1週間あたりの多量飲酒日の割合はバレニクリン群で22%近く低下した。

研究者らの指摘によれば、バレニクリンの効果はナルトレキソンやアカンプロセートの臨床試験でみられた効果に匹敵するという。この2剤は、アルコール依存症の治療薬としてすでに米食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration)から承認されている薬だ。アルコール摂取に対する治療の平均的な効果は、喫煙者と非喫煙者で大差なかった。飲酒欲求もバレニクリン群で有意に低下した。

リッテン博士と共同研究者らは、バレニクリンは忍容性が良好であったと報告している。バレニクリンで最も多くみられた副作用は悪心、異常な夢、便秘であったが、影響は概ね軽度であった。この薬をアルコール問題の治療薬として開発するうえで、持続的効果の有無を検討するためもっと長期的に投与してフォローアップの評価をすることが、次の重要なステップになると彼らは結論付けている。


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