気分安定剤
気分安定薬
いわゆる気分の波を抑える効果のある薬剤で、基本的に双極性障害の治療に用いられています。
また、躁状態やうつ状態を抑える作用もあることから、場合によっては統合失調症やてんかんの治療に用いられることもあります。
気分安定薬の多くは抗けいれん薬に属するものですが、これは抗けいれん薬に脳内細胞の過剰な神経伝達物質の放出を抑える作用があり、このことによる気分安定作用が認められることによります。
◆気分安定薬 |
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リチウム |
抗けいれん薬 |
その他 |
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◆双極性障害とは◆
双極性障害とは気分が高揚し、いわゆるハイになる『躁状態』と、落ち込みや活動意欲の低下といった『うつ状態』の相反した二つの症状が、時期をおいて1人の人に繰り返し交互に現れる精神病で、従来は躁うつ病と呼ばれていたものです。
双極性障害は躁状態の程度よって、はっきりとした躁症状が1度でも認められる双極性I型障害と、躁症状が程度の軽い軽躁状態である双極性II型障害の2つのタイプに分類されています。
躁状態とは気分の高揚、活動性の亢進、睡眠要求の減少、誇大妄想、観念奔逸、集中困難、易刺激性、脱抑制といった症状が1週間以上続く状態を指します。
気分や意欲が高まり、いくつもの考えが浮んで、活動的になりますが、その反面で注意力が散漫になり、ひとつのことに集中することができなくなります。
さらに、思考や感情がコントロールできなくなることから対人関係のトラブルや、浪費、性的逸脱などの脱抑制的な行為に至ることもあり、信頼性や社会的地位を失うなど、本人や周囲に多大な損害を与えてしまうこともあります。
一方、躁状態が4日以上継続するものの、周囲の人間関係や社会生活に支障をきたさない状態が軽躁状態です。
そのため、本人も周囲の人間も病状を軽く考えてしまいがちですが、放置されるとうつ状態を繰り返しやすくなるとされています。
双極性障害は脳内のドパミン、セロトニン、ノルアドレナリンといった神経伝達物質の分泌や、その機能の乱れが原因であると考えられています。
これらの神経伝達物質の異常を引き起こす要因については具体的には解明されていませんが、遺伝や環境、そして性格などが複雑に絡み合い発症の引き金となっているのではないかと考えられています。
双極性障害の生涯有病率は1%前後と比較的低く、また症状が治まっている時には精神症状は全く認められません。
しかし、放置されると症状の再発を繰り返し、患者の社会的、職業的機能に著しい損傷を与えることになります。
再発予防効果のある薬物を専門医の指示に従って規則正しくすることによってかなりコントロールできる病気でもあり、きちんとした治療を受ければ社会生活に支障をきたすこともなく、安定した生活を送れるとされていますが、患者の多くが自己判断によって、薬の服用や診療を中断してしまうことから、結果として症状を再発させたり、重症化させてしまうことが問題となっています。
双極性障害の治療は半年から1年に渡る継続・維持療法の後、予後を観測しながら薬の服用の継続を必要性を決定するのが一般的です。
特に双極性II型障害の人や、過去に躁症状が3回以上見られている人においては生涯に渡って内服薬による再発予防をすることが好ましいとされています。
なお、双極性障害の治療薬は躁状態、うつ状態で若干異なりますが、基本的に治療は気分安定薬が中心となっています。
◆双極性障害の症状◆
*躁症状
・気分の高揚、上機嫌
・誇大妄想
・おしゃべりになる(多弁)
・いろいろな考えが次々に頭に浮かぶ(観念奔逸)
・注意力散漫
・過活動、不眠
・怒りっぽくなる(易刺激性、攻撃性)
・浪費、性的逸脱行為
*うつ症状
・憂鬱、落ち込み
・興味の喪失
・食欲、体重の低下(或いは増加)
・睡眠障害
・活動意欲の低下
・希死念慮