ゾコンTキットは、真菌性の膣炎、トリコモナス膣炎、細菌性膣症治療に有用なフルコナゾール錠とチニダゾール錠剤がセットになった経口薬です。
膣炎は、さまざまな原因菌によって膣内粘膜が炎症を起こした状態のことで、通常とは違うにおいや色のおりものが出たり、強いかゆみとなって現れることが多い感染症です。複数の症状が複合的に現われたり、症状を繰り返す人もいるため、治療をしないでそのまましておくと、不妊症の原因になったり、妊婦が感染した場合は、流産や早産の可能性が高まるだけでなく、子供に感染するおそれもあるので、早期治療が必要です。
真菌が原因とされる感染症の場合は、「カンジダ」と呼ばれるカビの一種が膣内で過剰に増えることで、膣カンジダが発症します。女性器の強いかゆみ、白いカスのようなおりものが特徴で、ひどい時は股の内側全体にかゆみが拡がることもあるようです。
カンジダは、通常は人間の腸管、皮膚、膣内などに存在していることが多く、一般成人女性の約15%、妊婦の20%以上の膣内にカンジダが存在しているというデータもあり、高温多湿な気候、合成繊維のきつい下着、劣悪な衛生状態や、抗生物質の服用などが原因で、カンジダによる感染症が起こると言われています。
トリコモナス感染症の場合は、トリコモナスと呼ばれる原虫が原因となり、腟トリコモナス症が発症します。多くの場合は女性に症状が見られ、生殖年齢にある女性の約20%が発症すると言われています。感染原因は主に性行為ですが、そのほかには下着、タオル、便器、浴槽での感染の可能性も考えられます。
女性器の痛みやかゆみ、灼熱感、性交・排尿時の不快感に加え、悪臭を伴う淡黄色や乳白色の泡立ったおりものなどが主な症状です。
細菌性膣炎は、膣の自浄作用の低下により、特定の病原性細菌ではない一般の嫌気性菌によって引き起こされます。通常、女性の膣内は細菌や真菌が棲みついており、特にラクトバチルスという乳酸菌は膣内を酸性に保ち、内部を菌から守る働きをしている大切な菌です。しかし、このラクトバチルスが何かしらの原因で少なくなると膣内の細菌バランスが崩れ、正常な細菌と嫌気性菌などの数的な優位性が入れ替わった状態になるために細菌性膣炎に進行することがあります。
白、灰色または黄色を帯びて濁ったおりもの、悪臭(特に魚介類のようなにおい)、かゆみや膣外陰部の痛み、熱感、発赤などの症状が特徴です。しかし、多くの場合は症状に気付かずに日常生活を送っていることが多いようです。
ゾコンTキットの有効成分のひとつであるフルコナゾールは、日本では20年以上にわたって広く医療で使用されている真菌症治療薬です。またもうひとつの成分であるチニダゾールは長年、日本や海外の多くで膣トリコモナスや細菌性膣炎治療に使用されており、原虫、細菌を強力に抑制する作用を持っています。
フルコナゾールはアゾール系薬に属し、膣の微生物群を崩壊させることなく、膣の真菌性感染症を処置するのに有効であり、真菌の細胞膜の主成分であるエルゴステロールの合成を選択的に阻害し、透過性や膜機能の障害を起こすことで菌の増殖を抑制します。そのほか、カンジダ血症、カンジダ肺・気管支炎、カンジダ尿症、カンジダ食道・消化管炎やクリプトコッカスによるクリプトコッカス髄膜炎、肺クリプトコッカス症の治療などにも幅広く使用されています。
一方、チニダゾールは、トリコモナス腟炎の原因となる原虫や、嫌気性菌が原因で起こる細菌性膣炎の細菌に対して効果を現わします。チニダゾールは、細胞のDNAに結合してDNA障害を引き起こすことで、細胞を死に至らしめると考えられています。細かい作用機序はあまり明らかにされていませんが、チニダゾールは細菌性膣炎治療に対して確かな治療効果を期待することができます。また、少ない服用回数で効果が見られ、副作用が比較的少ないことも特長です。
チニダゾールは、ランブル鞭毛虫症(下痢や胃のけいれんを引き起こす腸の感染症)、およびアメーバ症(腸の感染症)の治療にも有効とされています。
研究の結果、膣感染症の治療に対してフルコナゾールとチニダゾールを組み合わせて使用した場合、いずれも単剤で使用するよりも少ない用量で同等以上の効果を発揮するだけでなく、1回の服用ですべての局面において改善がみられたとの報告がされています。このことからも、これら2つの薬剤がセットになったゾコンTキットは、膣感染症に対して非常に有効な薬であると考えることができます。