アレノは、一過性虚血発作(TIA)や血栓が原因で脳卒中を起こした人の脳卒中再発リスクを減少させる抗血小板薬です。
脳血管障害のひとつである脳卒中は、血管の問題により酸素や栄養が脳へ運ばれなくなり、脳細胞が死滅してしまう疾患です。酸素が運ばれなくなった脳の神経細胞は数分以内に壊死するだけでなく、壊死した脳細胞は再生しません。そのため、その神経部分がコントロールしていた身体機能が動かなくなり、体の片側の麻痺、言語障害、ものが飲み込めなくなるなどの後遺症が残ることがあります。
脳卒中は、血管破損により起こる脳出血やクモ膜下出血と、血管が詰まることで起こる脳梗塞、一過性虚血発作などに分けられます。脳卒中が起こる原因として、高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙、心臓病(心房細動)などが挙げられ、このうち高血圧からは脳出血に移行することが多く、また心臓病からは血栓による脳梗塞、そして残りは動脈硬化から一過性脳虚血発作が引き起こされ、最終的に脳梗塞へと至るケースが多いようです。
この一過性脳虚血発作(TIA)は脳梗塞の前触れ発作とも呼ばれ、脳の血管が詰まるタイプの脳卒中です。半身のしびれ感、軽い言語障害、視野が狭くなるなどの症状が現われますが、一般に数分以内もしくは24時間以内に症状が治まります。しかし、その後に適切な治療を行なわない場合は、約4分の1の割合で半年以内に脳卒中を起こすと言われています。
いったん脳卒中を起こした人は致死性の血管イベントを発症させるリスクが非常に高くなるため、それを予防するのに有効な抗血栓療法が必要不可欠になります。
抗血栓療法には、抗血小板療法、抗凝固療法、線溶療法があり、このうち抗血小板療法は主に再発予防のための治療で、血栓を作りやすくする血小板の働きを抑え、血液をかたまりにくくするのが目的です。抗凝固療法も同じく血栓抑制のほか、血管がふさがるのを防ぐことを目的としていますが、主に心臓内の血栓が原因で起こる脳塞栓症(心原性脳梗塞症)の場合に用いられます。また線溶療法は血栓溶解療法とも呼ばれる治療法で、脳血管にできた血栓を溶かす治療法です。
アレノには2種類の有効成分が配合されており、そのひとつであるジピリダモールは抗血小板薬に属する薬剤です。細胞内で情報を伝達する酵素のホスホジエステラーゼを阻害し、それによりcAMP(環状アデノシン一リン酸)濃度が増加することで血小板凝集抑制作用を示すほか、冠動脈拡張作用も持っています。
またアレノのもうひとつの主要成分であるアスピリンは、消炎鎮痛剤として頭痛薬などに使用されている成分ですが、その一方で、血液を凝固させる作用を持つ酵素であるシクロオキシゲナーゼ-1(COX-1)を阻害することにより、血小板の凝集を引き起こす物質のトロンボキサンA2の合成を阻害してその働きを抑制するため、血液が凝固して血管をつまらせるのを防ぎます。
最近の研究では、ジピリダモールとアスピリンの併用療法は、抗凝固療法と比べて効果が良好なだけでなく、抗凝固剤服用による治療よりも大出血イベント発症リスクを少なくとも60%以上減少することが報告されています。
さらにジピリダモールとアスピリンの併用療法は、アスピリン単独およびクロピドグレル単独といった療法と並んで、非心原性の脳卒中既往患者に対する治療オプションとして、脳卒中再発予防に対する国際的な治療ガイドラインにおいても推奨されています。