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2011-09-12

ソース(記事原文):ワールドクランチ

処方せん医薬の筋弛緩薬は、アルコール依存症の魔法の薬?

ワールドクランチ(2011年9月12日)― ベレニス・ロックフォール・ジョバンニ(Berenice Rocfort-Giovanni)氏著

アルコール依存症の治療薬を発見したと言う人が増えている。それは、バクロフェンという定番だが強力な筋弛緩薬である。 ただ問題は、ルー・ゲーリック病や脳性麻痺、また痙攣性麻痺を伴う病気などに苦しんでいるのでない限り、その薬を使用することは違法であるということである。

パリ - 彼らは単に患者というより、信者であると言えるだろう。「奇跡」と呼ぶ人もいる。その薬が「自由」や「救済」を与えてくれたと信じる人もいる。アルコール依存症から回復しつつある彼らにとって、バクロフェンはまさに魔法の薬に他ならない。なかなか得ることの出来なかった依存症の「治療薬」なのだ。

ちなみに、バクロフェンはアルコール依存症を治療するために作られたのではない。 むしろ、このガンマアミノ酪酸(GABA)は筋弛緩薬であり、 脳性麻痺 や ルー・ゲーリック病などの運動障害を治療するために作られた。

しかし、禁断症状 やアルコールに対する渇望を抑制することで、アルコール依存症を緩和することを示唆する根拠が増え続けている。それはまさに、心臓のスペシャリストであるフランス人医師オリヴィエ・アメイセン(Olivier Ameisen)が自らのアルコール依存症を治療するためにバクロフェンを試した時に発見した事実である。 アメイセン医師は 自らの体験についての本 “Le Dernier Verre” (「最後の一杯」の意)を執筆した。2008年に出版されたその本に感化を受けた多くののアルコール依存症の人々は、アメイセン医師の例に倣った。彼らはアメイセン医師のように、ケムストロ(Kemstro)、リオレサール( Lioresal)、 そしてガブロフェン( Gablofen)というブランド名で1970年代から現在まで販売されているこの薬を大量に服用し始めた。

「アルコール依存症の兆候は、アルコールに対する押さえきれない欲望です」と、アメイセン医師は語る。 「つまるところこの兆候を終わらせると、これがすなわち病気自体からの回復を意味することになるのです」。アメイセン医師は8年前、初めてバクロフェンを自分自身に投与した。同医師は、それから一滴もお酒を飲んでいないと述べている。

「アメイセン医師は私の命の恩人です」と語るのは、アルコール依存症が1ヶ月で「治った」という51歳の通訳者ミアさん。さらによいことに、幾人かの患者は治療後にアルコールを飲んでも飲み過ぎない、ということだ。これはアルコール依存症者なら誰もが夢見ることである。

医師がリスクを負わなければならない

開放への道は危険だらけである。筋肉の痙攣の治療以外にバクロフェンを勧めることは厳密にいうと法律に反するため、アルコール依存症者にこの薬を処方することに同意する医者はめったにいない。54歳のアルコール依存症者シルビーさんは、バクロフェンを入手するため、わざわざスペインに出向いて行ったときのことを、今でも思い起こす。シルビーさんは16歳のとき、アルコールを大量に飲むようになった。他にもバクロフェンをインターネットで購入するという人もいる。

フランス保健省は「バクロフェンのアルコール依存症治療薬としての効果はまだ証明されていません」と忠告し、アルコール依存症者にこの薬を使用しないよう強く呼びかけた。懸念されているのは、アルコール依存者が服用しているとされるこの薬の量だ。通常、医師たちが勧めるバクロフェンの1日の服用量は成人で100-120ミリグラムまでである。ところが、アルコール依存者は、1日平均150ミリグラムのバクロフェンがアルコールへの欲望を効果的に抑制するためには必要だという。アルコール依存者の中には、この薬の威力に驚き、平均服用量の規制に従うことを一切やめてしまう人々もいる。「最初は10ミリグラムからはじめて、最高で210ミリグラムまで増やし、それを2日続けました。それから90ミリグラムまで減らしました」と、ミアさんは語る。

アルコール依存症治療のためにバクロフェンを使用することに賛同する人々は、インターネット上でコミュニティを結成し、医師が自由にこの薬を処方できるよう保健省に向けて激しいロビー活動を行っている。彼らはすでに最初の戦いに勝利しており、本年末からアルコール依存症に対するバクロフェンの効能を見極めるための臨床試験がフランスで実施される。パリ医科大学(Universite Paris Descartes)の総合医療学教授であるフィリップ・ジョリー(Philippe Jaury)氏監督の下、同薬は300人の患者に投与される。2013年には最初の結果が出るはずである。

「それでは遅すぎるのです」と、アメイセン医師は言う。「フランスだけでも、毎日アルコール中毒で120人もの人が亡くなっているのですから。」

フランス医学会でのアメイセン医師の同僚達は、同薬に対し複雑な思いを抱いている。他に合法の薬がないのなら、バクロフェンを合法化すべきであり、その方が患者がどのみち手に入れようとしている同薬の使用について医師が監督できるようになる、という人々もいる。しかし一方で、医療過誤訴訟に発展しかねないという恐怖心と、また単にアルコール中毒に対するバクロフェンの使用が十分に研究されていないという理由から、断固としてバクロフェンの処方に反対する人々もいる。「我々は微妙な立場に立たされています」と、セントクラウド市にあるキャトル・ヴィエ病院(Quatre-Ville hospital)中毒学専門医のステファニー・ガイガー・ボワコット(Stephanie Geiger-Boicot)医師は語る。「もし告訴されれば、我々には法的な保護がありません」。

一般的に言って中毒学専門医らは、依存の感情をあまりにも早く取り除いてしまうような薬は信用しないものである。特に、患者が継続的に服用するバクロフェンの場合は、副作用が全くないわけではなく、眠気、口の乾燥、筋肉の痙攣、そして時々うつ症状などを引き起こす。アルコール依存症の専門家である精神科医のミシェル・クラペレット(Michel Craplet)氏は、同薬を用いた治療には心理的な欠点もあると言う。同医師はバクロフェンで自己治療を行うアルコール中毒者たちを「非常に孤独」であると表現する。

「彼らは一時期、アルコールという名の彼らにとって魔法の薬だと思えたもの共に生きていたのです」と、同医師は言う。「今や彼らはバクロフェンという別の魔法の薬が、自らを病気から救ってくれると思っています。つまりは、一つの幻想が他の幻想とすり替わっているだけなのです」。

バクロフェンは幻想に過ぎないのだろうか?それとも、超プラセボ効果なのだろうか?はたまた、人類の歴史を通じて存在してきた病気に対して本当に効果的な初の治療薬なのだろうか?判決は2年後である。


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