アブヘイラブは、狂犬病の治療・予防のためのワクチンです。
狂犬病はラブドウイルス科リッサウイルス属の狂犬病ウイルスを病原体とするウイルス性の人獣共通感染症で、ウイルスの体内への侵入により、けいれんなどの重い症状を起こし、ほぼ100%の確率で死に至る疾患です。日本では1957年以降、国内での感染は認められていませんが、一部の国を除き現在でも世界中に存在しています。
狂犬病ウイルスは犬に限らず、ウイルスを保有する猫やコウモリなどの野生動物に咬まれたり、引っ掻かれたりしてできた傷口から侵入するほか、これらの動物に傷口や目・唇など粘膜部を舐められた場合も危険性が高くなります。発病すると発熱、頭痛、全身の倦怠感、嘔吐、落ち着きのなさ、興奮、筋肉のけいれんなどの症状以外に、水などの液体飲むと嚥下筋がけいれんし、強い痛みを感じる恐水症を発することもあります。
感染後は神経系を伝わって脳に到達し、発病した場合はほぼ確実に死に至ります。ところがウイルスの進む速度は遅いため、発病するかどうかは咬まれた傷口の位置、大きさやウイルスの量で大きく異なり、その潜伏期間は20-60日程度と言われています。
あいにく現在のところ狂犬病発症後の治療薬は存在せず、また
狂犬病を発症し、狂犬病ウイルスが脳内で増殖した後でなければ陽性反応が出ないため、狂犬病にかかっているかどうかは受傷直後や潜伏期間中に診断することができません。ですから狂犬病が疑われる動物に咬まれた場合は、
その直後から連続してワクチンを接種する暴露後ワクチン接種により発症を抑えることが必要です。そのためのワクチンがアブヘイラブです。
アブヘイラブは
ウイルスの毒性をなくし、免疫をつけるために必要な成分を抽出し、ワクチン化した不活化ワクチンで 予防に使用されま
す。曝露後の治療には曝露後0日、3日、7日、14日、28日および90日に各1回接種をしますが、加害動物が明らかで、なおかつその動物が加害以後10日以上生存していることが確認された場合は狂犬病の感染はないと判断され、ワクチン接種は中止となります。また予防には0日、7日および21日または28日の3回のほか、状況により毎年追加免疫を行ないます。
日本では、渡航前に厚生労働省検疫所や医療機関での曝露前接種が推奨されており、また曝露前接種を受けていても狂犬病が疑われる動物に接触した場合は、狂犬病ワクチンの2回の追加接種(最終接種後6ヵ月以上経過している場合は5回以上の追加接種)が必要になります。