アシビル・クリーム5%は、ヘルペスウイルスの増殖を抑える薬で、単純疱疹や帯状疱疹、水ぼうそう、性器ヘルペスなどの治療に使用されます。
ヘルペスは、ヘルペスウイルスの感染により皮膚や粘膜に水ぶくれができた状態です。本来、ヘルペスウイルスは特別なウイルスではなく、日本人の20-30代の約半数、60代以上ではほとんどの人が感染していると言われており、細胞の中に潜んでいます。通常はその症状が出ることはほとんどありませんが、風邪やストレスなどで抵抗力が低下すると出現しやすくなり、また再発することも多々あります。
現在のところヒトヘルペスウイルスは8種類発見されており、そのうち主なものは水痘・帯状疱疹ウイルスと単純ヘルペスウイルスです。水痘・帯状疱疹ウイルスは水ぼうそうを引き起こすウイルスで、完治後も知覚神経の神経節に潜伏し、その後に帯状疱疹として胸や背中などの胸髄神経節と顔面などの三叉神経の領域を中心として再発することがあります。実際に帯状疱疹にかかる人は日本人では10-20%と言われており、また帯状疱疹の再発はほとんどありません。
帯状疱疹の症状としては、まず神経痛に似た疼痛や知覚異常が起こり、その後に疼痛の起こった部位に皮疹が帯状に現われます。紅斑や丘疹が現われ、やがて水疱、膿疱、びらん・潰瘍を経てからかさぶた状になり、最後にはこのかさぶたがはがれて発症後2-3週間で元に戻りますが、皮疹が治った後も帯状疱疹神経痛として疼痛が長期間残る場合も多くあります。
一方、単純ヘルペスウイルスは主に口唇、顔、角膜に多く発生する1型と、性器に発生する2型に分類することができます。一般に痛がゆさを伴う小さな水ぶくれが複数でき、その後は水ぶくれが破れてかさぶたになり、1-2週間で治ります。しかし単純ヘルペスの場合、かなり高い頻度で再発するのが特徴です。再発の原因は体力の低下やストレスなどの精神的なものが多く、また性器ヘルペスの場合はほとんどの場合が性交です。いずれも再発前には約8割の人でムズムズ、ヒリヒリした感じや全身のだるさ、腰痛・下肢のしびれなどの兆候が現われると言われています。
ヘルペスウイルスは患部を直接触ることで感染し、水痘・帯状疱疹ウイルスの場合はくしゃみによる飛沫などで感染することもあります。感染後、ウイルスはDNA(遺伝子)を合成して細胞を増殖させていきますが、この増殖を阻害し、ヘルペスウイルスの活動を抑える働きをするのがアシビル・クリーム5%です。
ウイルス細胞は外部からDNAの原料となるデオキシグアノシンをはじめとする4種類の物質を取り込み、DNAを合成します。しかしアシビル・クリーム5%の有効成分であるアシクロビルはこのデオキシグアノシンの構造と非常によく似ているため、ヘルペスウイルスはデオキシグアノシンと間違えてアシクロビルを取り込んでしまいます。それによりDNAを合成することができず、結果として増殖ができなくなることでヘルペスウイルス感染による症状を抑えます。
そのためアシビル・クリーム5%による治療は、症状の兆候が現われた時点でできるだけ早急に開始することが早期治癒につながります。
ただしアシクロビルは、神経節内に潜伏感染しているウイルス対しては効果を発揮しません。またアシクロビルはウイルスのDNA複製を特異的に阻害するため、感染細胞内増殖中のウイルスに対してのみ有効とされています。